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通奏低音

先週から『G線上のアリア』の練習をしています。

練習が始まる前に、指揮者からお話がありました。
「この曲は、通称『G線上のアリア』ですが、これは、ヴァイオリンの一番太いG線だけで弾こうという、超ロマン的発想です。太い弦で、開放弦を嫌ってハイポジションで弾く、というのがロマン派のひとつの特徴です。バロックの場合は、弦をできるだけ長く使うということで、ローポジション主体で、そこで出てくる音色とか表情を、バッハは期待しているので、我々が今まで耳になじんできた、G線上のアリアという表現は、少し忘れたほうがいいです。いわゆる、歴史の中でついた垢のようなものを洗い落として、本来の姿を取り戻してみたいと思います。」
ということで、ポピュラーな『G線上のアリア』からは脱却して、本来のバッハが描く『Air』に近づく努力をしてみたいと思います。


バロック音楽の特徴のひとつに、「通奏低音」があります。
文字通り、通して奏でられる低音。
普通は、低音の上に、6とか3とか数字がつけられていて、今の時代でいうコードネームのようなものですが、それをもとに和音が即興的につけられます。
リュート、チェンバロ、オルガン、というような楽器で和音を補填していく。その上に、メロディー楽器がメロディーをのせていきます。それが1本だったり、2本だったり、3本だったりします。この曲の場合、1stが弾いているメロディーが、メロディーラインだと思ってしまいがちですが、それは間違いで、2ndもマンドラもメロディー。もちろん、ギターもメロディーです。メロディーが4本束になっていて、その中でもっとも重要な曲の構造をつかさどるのが低音です。

バロック時代、作曲が行われる際に、まず行われたことは、インヴェンツィオとよばれたモティーフの創出、そして、おおよその和音連結プランを練ることだったようです。(一般的なこととして)その設計を元に、曲が細かく仕上げられていきます。ソプラノだけがメロディーではなく、全部のパートがそれぞれ独立していて、同じ存在感を持っています。(このように、2つ以上の違った旋律を同時に組み合わせる作曲技法を対位法と言います)
例えば、古典派はメロディーが一番、次に低音・・・というふうに順番がつけられているのですが、バロックの場合は、それぞれが存在感を出して、その中で調和を生み出していきます。

和声が変わるポイントを、全員で感じながら、統一した世界観のようなものをみんなでさぐっていきたいと思います。
by michinokuhitori | 2007-05-30 23:16
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