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「ピッキング」と「トレモロ」


マンドリンで合奏をする時に、よく、ピッキングで弾くか、トレモロで弾くかということが問題になります。長い音符の時はさほど話題にならないのですが、8分音符や16分音符などが並んでいて、上にスラーがかかっている時など、どちらで弾いたらいいのか迷うことがあります。
特に同じパートが複数人数いる時は打ち合わせをする必要があります。

でも、マンドリン合奏の場合、どちらで弾くか、という奏法だけの問題として捉えがちで、その曲が求めているサウンドを意識した上でのピッキングかトレモロか、というところまで踏み込んでいないというのが一般的のような気がします。また、スラーがかかっているからトレモロ、スタッカートがついているからピッキング、という決め方を普通にしているようにも思われます。

ある団体で、練習していた時のこと、
「そこの音、ウチね。」と言われ、「?????」
でも、周りの人たちは納得している様子。
しばらく観察するうちに、ウチ=打ち=ピッキングだということがわかりました。
(なんて非音楽的な表現なんだ・・・)とその時は思ったのですが、人間慣れるもので、そのうち「そこはウチね。」と言われて、普通に「はい。」と答えている自分がいるのでした。

ピッキング=打ち・・・言葉からくるイメージでは、ピックをばちのように弦に叩き込むという印象があります。それ以上のイメージが膨らまないのですが、実際はピッキングの種類は一つではなく、実にたくさんのニュアンスを出せる奏法であるということは、プリマヴェーラの皆さんならおわかりですよね。


先日の練習で、アイネクライネのロマンスを弾いていた時のこと。

トリオから、セカンドとマンドラの8分音符のきれいな帯がでてきます。
(セカンドは、ファレファレファレ、マンドラは、レラレラレラで始まるところです。)
ここで難しいのは、6つの音にスラーがかかっていることです。バロックのように2個でアーティキュレーションがつけられていたら、ピッキングでもいいのですが、この時代になってくるとアーティキュレーションで細かく単語のように発音するイディオムではなくなってきます。全体の流れの中で響きができてくるので、そのあたりの表現が難しいところです。

指揮者が、「ここはトレモロとピッキングとどちらが楽ですか?」と聞くと、
メンバーがすかさず、「そりゃ、ピッキングの方が断然弾きやすいです!」と答えました。

指揮者は、「ここは滑らかな感じで揺れを作ることが大切です。ピッキングでやったときに、デコボコした感じはうまく表現できるけど、滑らかさには欠ける恐れがあります。そっちの方に力点を置くとトレモロの方がやりやすいかなぁと思いますが・・・・どっちがいいんでしょうね。」

メンバー:「がんばります!!!」

~ピッキングで弾いてみました。

指揮者:「ここは揺れてください。口で歌うと、“ティカティカ”とか“ティヤティヤ”という感じではなくて、“レロレロ”とか“ラリラリ”という感じ。タイミングもドンピシャで合わせてください。」

メンバー:「やってみたら、ピッキングの方が断然難しかった・・・^^;」

指揮者:「ピッキングの場合、コントロールをうまくやらないと弾んでしまいます。特に低い方を強く弾かないように。超レガートで。そして、そのマニアックな刻みに喜びや生きがいを感じてください。(笑)

なんとも難しい注文。

こういうピッキングは、手首だけでやろうとすると、支点の決まったワイパー状のヒンジ運動になるので、どうしてもカタカタとした感じで聞こえてしまいます。(どんなに気を使って気持ちをこめて弾いても、出てくる音は滑らかにはなりません)
腕も使って、回転運動を入れることが必要です。そしてそのためにはピックの持ち方も重要になってきます。(口で言うのは簡単ですが・・・・)

マンドリンを弾いている人の多くが、ピッキングよりトレモロの方が難しいと言われますが、本当はピッキングの方がずっと難しいのです。
みんなでがんばってピッキングを極めてみましょう。
きっとマンドリンの音楽的表現が広がっていくと思いますよ。
by michinokuhitori | 2009-02-06 00:16
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