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「武士道」と「見返り美人」

「さくら」は日本古謡と書かれていますが、実際はそれほど古い曲ではなく、江戸時代末期に筝曲の練習曲として書かれたものだそうです。

武満さんは、「さくら」の凛とした、澄み渡った感じのメロディーに、江戸情緒たっぷりの粋な旋律を絡ませています。
41小節からの、2nd・マンドラのメロディーに対する、1st・ギターのメロディーもそうです。
2ndとマンドラのメロディーは、いわゆる「さくら」のメロディー。あまり音程が飛ぶことはなく、近くの音に移っていきます。それがしっとりとした感じを出していますが、それに対して、1stとギターの四分音符の動きは、シンコペーションや、音の跳躍もあり、とてもエスプレシーヴォです。両方のキャラクターを対立させるところなので、緊迫した感じでお互いに譲らず、追いかけていきます。

特に対位法的なものは「入り」が大事で、この「入り」がはっきりしないと、湧き出るような感じにはなりません。41小節目からの追っかけは、1小節だけの遅れなので、非常に緊張度が高いところです。普通は4小節遅れくらいで入っていくものが多いのですが、1,2小節で、時間が短くて追っかけていくのを、バロックだと、「ストレッタ」と言うそうです。フーガの最後の方などで、緊張度を高めて盛り上げる時に使うそうですが、ここは、最初からストレッタのような感じがあるので、緊迫した感じで演奏します。

「43小節目の1stは、色っぽく。芸妓さんになった気分で、見返り美人のような身体性があるのがいいですね。」と歌いながら踊る指揮者。(やけに色っぽい)
「44小節目のギターも同じく、低音の見返り美人でよろしく。」
江戸の武士道のような凛とした感じと、情緒的で粋な感じが融合した、武満さんの「さくら」
お互いのキャラクターを意識しながら演奏してみましょう。


37小節からのポリフォニーとのコントラストとして、9小節目から弾いてみました。
ここはホモフォニーです。
ポリフォニーというのは複数の独立した旋律で動く音楽ですが、それに対してホモフォニーというのは、和音中心で動く音楽です。
うまくハーモニーが溶け合った時は、なんともいえない快感。思わず胸がしめつけられるような感覚になります。武満さんの世界ですね。
自分の中で、ポリフォニー、ホモフォニーの世界を感じていくことが大事です。

17小節目は、不思議な音で、みんなが驚くような和音です。しかも、武満さんはそこに、mfzをつけています。
自信を持って弾かないと、「間違えた?」と言われそうなところです。唐突で、予想する人は誰もいない、驚くところ。一人一人が、驚く音だということをよく理解して、響かせることが大事です。そうすると、何かトリップしたような、異次元にすっぽりと入ったような雰囲気になります。

「なぜこういう和音を使ったのか、たぶん武満さんもわからないと思いますが、きっと心の底からこういう音に聞こえたのでしょう。 一瞬、みんなで時空を超えて、すぐにまた戻るのです。変、変、って弾いてると本当に変な音楽になりますよ~。」と言う指揮者。
この不思議な音と異次元の空間を、早く全員で感じることができるようになりたいものです。
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by michinokuhitori | 2007-11-29 15:14

「さくら」が「カノン」になる

先週から武満徹の「さくら」と「小さな空」にとりかかっていますが、先週はマンドリン、マンドラは全員出席でギターが1人。今週は1st1人、2nd2人、マンドラ1人、ギター2人。

「さくら」は最低、1st 2人、 2nd 2人、 マンドラ 2人、 ギター 4人いなければ音楽になりません。つまり、ほとんどのメンバーが参加しなければ出来ない曲なのです。いないパートは抜かして、いる人だけであわせればいいという人もいますが、それでは音楽になりませんし、練習する意味をなさないのです。

この曲はハーモニーが大事です。武満さんがハーモニーに気を配って、割愛できない音としてパート割りをしているので、みんな音に意味があるのです。本当は省略しようと思えばできるけれども、それをしないで、合唱の中で最高のポジションを求めようとしたのです。ですから、音色とか音のバランスに細心の注意を払っていかないと、こういうスコアはとても難しいのです。
マンドリンアンサンブル研究会プリマヴェーラが、日ごろの練習の中でやろうとしていることを、メンバーのみなさんはできるだけ理解して、練習に臨んでほしいと思います。

というわけで、いる人だけでできる、37小節目から48小節目だけをきょうは練習しました。

ここは、カノンです。それぞれのパートが追いかけながら主張しあう西洋のポリフォニーです。ただ、表情は日本語の語感を大切にしていきたいので、日本的なものと西洋的なものが融合した、珍しい世界だと思います。

37小節から2ndがさくらのメロディーを、1小節遅れてマンドラがそれを追いかけます。
41小節目からは1st、42小節めでギターがそれを追いかけます。
それぞれのパートが追いかけるのですが、エコーのように聞こえさせないことが大事です。音域が離れていても、全部の声部が主張しあい、次々とテーマが出てくるような印象を与えないといけないところです。全然尽きない感じ、常に湧き出てくるような感じが対位法の特徴です。
また、ポリフォニックな感じの音楽というのは、厳格さがないといけません。音が出てくるのに規則性があって、それに伴って生まれてくる音楽も、厳格な揺るがない感じ、何か大きなものを構築していく感じがないといけないので、テンポがぐらぐらしないで、その中でゆれて表情をつけます。

37小節、2ndから始まるさくらのメロディーが一つのセンテンスになります。
始まって成長して、減衰して、消えていくという世界観が、「さくら」という言葉自体の持つイメージと重なり合います。
つぼみがふくらんで、咲きそうになって、咲いて、散っていく・・・・2小節の中にそういう凝縮した時間を感じさせます。
厳しい時間の感覚を表現するのに、マンドリン属のトレモロは非常によく合います。運動を続けないと長い音が作れないという宿命からくるものですが、凛とした感じ、張った感じ、こういう緊張感は、擦って音を伸ばすヴァイオリンのような楽器にはなかなか作れません。

追っかけの対位法的なものというのは、ヨーロッパではルネッサンスに花が開きました。
その技術がバロック音楽に少し変容した形で受け継がれていきます。その大家がバッハです。
ある旋律を追っかけていく。この旋律は4パートですが、もっとすごいものは16声部とか20以上のものもあるそうです。テーマが繰り返し模倣されることによって、その中に永遠性を感じるということを追求した音楽です。
武満さんのこの曲は短い素材ですが、ごくわずかな短い時間の中に凝縮された永遠性をここで提示できるように演奏したいものです。

「武満さんは、『自分は作曲のテクニックがないから、今の若い人みたいにスラスラと曲が書けない。』と言われていたそうです。1音ずつ苦労して、吟味しながら埋めていく世界。内面の世界に深く沈潜していく作業なのです。それを我々も追体験していかないと、この曲をやる意味がありません。漫然と音を出さないで、それぞれの音の持つ意味をよく理解して、できるだけそこに近づいていけるようにしましょう。」と言う指揮者。

みんなで武満ワールドを堪能したいと思います。



~~練習日変更のお知らせ~~

予定表では、12月2日(日)が練習日となっていますが、12月16日(日)に変更になります。
時間は午前10時から。場所は清水交流センターです。
よろしくお願いします。
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by michinokuhitori | 2007-11-22 00:23

レコーディング

延期になっていたレコーディングを行いました。

予定していた4曲を、3回ずつ位演奏して、合間に練習して、最後は集中力との戦いでした。
普段、1曲を通して弾く、ということがあまりないので、皆さんお疲れの様子。
演奏会の本番並みに緊張したのではないでしょうか?

曲の仕上がりそのものはまだまだで、1曲録音が終わるたびに、指揮者のため息(のような息づかい)が・・・・・・・^^;
音楽的に演奏するというのは本当に難しく、私たちの演奏は、指揮者の頭の中で鳴っている音楽とは程遠いものだったのでしょうね。

でも、これが今私たちができるベストに近いものだと思っています。
皆さん、よくがんばりました!
次に弾く時にはもっと良い演奏ができるように、これからもみんなで努力していきたいと思っています。今回の録音を聞いて、個々に反省点をみつけ、今後の練習に活かしてください。

次回の練習から、武満徹の「さくら」「小さな空」に取り掛かります。
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by michinokuhitori | 2007-11-01 15:31