1 青空みたら 綿のような雲が 悲しみをのせて 飛んでいった (リフレイン) いたずらが過ぎて 叱られて泣いた こどもの頃を 憶いだした 夕空みたら 教会の窓の ステンドグラスが 眞赫に燃えてた 夜空を見たら 小さな星が 涙のように 光っていた 武満徹の「小さな空」は1962年、TBSラジオドラマ「ガンキング」の主題歌になり、その後、武満さんの手によって混声合唱曲に編曲されました。 歌詞を読むと、子供の頃の思い出の中に、単に懐かしさだけでなく、悲しみやほろ苦さのようなものを感じます。武満さんが子供の頃というのはちょうど戦争の時代。貧しく苦しい生活の中で悲しい思い出もたくさんあるのでしょう。 武満さんの楽譜の中には、rall.......//とか、riten..../ とか意味不明な記号がたくさんあります。タイになっている最初の音にテヌートがついているというのもあります。武満さんは、この意味不明な記号の中に、日本人特有の「間」というものを表現したかったのでしょう。日本は「間の文化」といわれますが、音楽の中でも、カウントできない独特の間合いをみんなで感じて、その時の共通の気配で決めてぴったり合う、というのが日本人の特質だそうです。 先日もあるテレビ番組で、「鼓」のことを取り上げていましたが、「息を合わせて間を作り、大鼓小鼓の音色を生かす。」というようなことを言っていました。この間が非常に重要で、間が音を活かすのだそうです。「間によって日本人が自然の中で培ってきたイメージを引き出すのです。」というようなことを鼓の奏者の方は話していました。 もっとも、最近はKYな日本人が増えていますから、こういう独特な間合いというものをどれくらい感じられるかは疑問ですが、演奏するメンバー全員が同じ空気を感じて息を合わせられたら素晴らしいですね。 武満さんは、こうして「間」を作りだすことで、沈黙を喚起しようとしました。「沈黙、静けさこそが永遠だ」という言葉を好んでいたそうですが、武満さんの曲が沈黙の世界からやってきて、また沈黙に帰っていくということを感じさせる音楽が多いのもうなずけます。特にギターが大好きだったそうで、音を出した後に自然に減衰していく、というのは撥弦楽器の宿命ですが、常に沈黙と隣り合わせにあることを気づかせてくれる楽器として、ギターのサウンドが一つのモデルとなって武満さんの中にあったようです。 後半に出てくるギターのハーモニックスは、3番の歌詞の「涙のように光っている小さな星」をイメージして指揮者が編曲しました。 夜空に少し悲しげに瞬く星・・・・・ 混声合唱とはまた一味違った、撥弦楽器ならではのサウンドで「小さな空」を演奏できるといいですね。 ▲
by michinokuhitori
| 2008-05-30 12:29
「月ありき」は、イタリアの作曲家、U.D.マルティーノが書いたセレナーデです。
この曲は、1908年のイルプレットロ社主催の第1回マンドリン合奏コンクールで第1位になった曲です。 マルティーノに関する資料は少なく、生没年も未詳です。(詳しく知っている方がいらっしゃったらご教授ください。) ロマン派以降の音楽は、夢、月、星、夜、愛、悲しみ、など、内面的な感情が描かれるようになりますが、特に「夜」は後期ロマン派からの重要な素材でした。ですから、こういう曲を演奏する時は、夜の雰囲気を作らないと演奏する必然性がなくなってしまうのです。 この「月ありき」も夜の雰囲気を醸し出すことが重要です。 ギターのイントロは、あまり健康的に弾かないで、静かに神秘的に上昇していきます。この上昇のアルペジオは意識を上に持って行きます。そしてそれを受けて1stのメロディーが、高いところからす~っと降りてくるのです。暗い夜の静寂の中に、透明な美しさを湛えた月の光。この情景をイメージして演奏してください。 7小節目からの2ndは少しためらいがちに、8小節4拍めからのマンドラはそれを押していきます。 16小節目からの1st,2ndの八分音符はスタッカートがついていますが、ピッキングにすると「ピンポ~ン」ときこえる(と、指揮者が言う)のでトレモロにします。作曲家の意図と違うかもしれませんが、ここは旋律ラインにしてしまいましょう。 29小節目からイ長調に転調して明るくなりますが、雰囲気はあまり変えないでいきます。 メロディーは民謡調(イタリア風)です。1stは浪々と歌いましょう。ここで田舎臭さを出しているのが2ndです。ここはハープのように美しく弾くのではなく、田舎くさく弾きましょう。(難しいですね(笑)) 本人はかっこいいつもりなんだけど田舎くさいような感じ。 41小節目からのギターのアルペジオは2小節単位で意識して、粒が同じにならないように、後ろのほうを軽めに、弱くしてください。 40小節からの2ndは主役です。そして、49小節目で1stと2ndが一緒になって大きな流れを作ります。ここで聴衆の心をぐっとつかみましょう。(ここ以外つかむところがないので(笑)) 84小節目からはどんどん静かな感じで。ギターの上昇のアルペジオはさっさと上がらないで、やっとの思いで上がっていくように弾きます。再び夜の静寂の中に消えていくように・・・・・。 ▲
by michinokuhitori
| 2008-05-29 12:44
グリーグが作曲したピアノ小品集「抒情小曲集」の中の1曲。
1886年に出版された第3集の5曲目(作品43の5)で原題は「Erotik」です。 テンポがゆっくりなので、八分音符で4つ振りにします。 楽譜の最初に書かれてある、con sordini. というのは、「弱音器をつけて」、という意味ですが、マンドリンは弱音器がないので、スルタストで演奏することにします。 1回目はノーマルで、1かっこの2小節目から2回目の演奏をスルタストでお願いします。 11小節目からはノーマルポジションで。 4つ振っていますが、2拍子の曲なので、2拍子の揺れが大事です。 マンドラの1小節目2小節目はゆりかごのような感じです。 2小節目の1stの装飾音はオンザビートではなく、前に出します。後期ロマン派あたりから、装飾を前に出すのが流行ります。ここで揺れを出して少し膨らむように。そして3小節目はカンタービレで、あふれるような感じで弾いてください。 クライマックスは7小節目の1st、マンドラの最高音レのテヌート。ここは声楽的に少し遅く、長めにします。そのために、前の部分をcresc.と一緒に少し早くします。 ただし、繰り返して2回目はスルタストで弾くので、全体が回想のように、はっきりとしない幻想の世界を描きます。クライマックスのところもあまりやり過ぎないようにします。 11小節目からは、まずギターから1st。これは受け渡しではなく対立です。そして12小節目の1stからマンドラは受け渡し。2小節単位でフレーズが出来上がっているので、13小節目からも同様です。ただし、次の piu mosso に向かっていくので、13小節目の方が、揺れが大きくなります。 15小節目からはギターⅠの刻みが主役です。他のパートはこの刻みに合わせていくようにします。ここは、sempre stretto 。常に先に行くような、せくような感じで、追い立てられるように進んでいきます。そして、19からは、piu cresc.。ギターⅡのバスも、それまで2小節単位だったものが、そこから1小節ごとになり緊迫感を強くしていきます。 22小節目がクライマックスですが、そのまま次のTempo Ⅰにピアノで入れないので、そこは遅くして、指揮も4つ+1つのような感じで振ります。22小節目のトリトヌスの音程を際立たせたら落として、23小節目に入ります。 26小節目の休符は、予測させて沈黙を作ります。自分の意思で時間を止めたくなるような感じです。 29小節目は2回目のエンディングの時にたっぷりと表情をつけて豊かな感じにします。 ちょっと気が遠くなるようななめらかな感じで。特に2ndは4番線なので、ごきごきした音にならないように気をつけましょう。 ▲
by michinokuhitori
| 2008-05-06 00:23
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