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breit(ブライト)

「悲しきワルツ」Fから、1stの下のパートとマンドラが、符点4分音符を含む音形で上昇していきます。ここは音の上昇に従って駆け上がっていくのですが、決して軽快に駆け上がるのではありません。上がっていくにつれて、重みが増していきます。ちょうど、小麦粉とか片栗粉を練っていくうちにだんだん粘りが出てきて、一生懸命かき回さないと動けないような感じです。

そして駆け上がったピークのところに、楽譜には「breit(ブライト)」という表示があります。この「ブライト」を用意するために必要な、Fからの上昇だったのですが、ブライトというのは、イタリア語のlargo(ラルゴ)と同義語で、「幅広くゆったりと」という意味です。シベリウスは、ほかの部分ではイタリア語で表示しているのに、ここは「ラルゴ」ではなく、ドイツ語で「ブライト」と表示しています。これは、いわゆるテンポ表示の「ラルゴ」と誤解されることを恐れてのことでしょう。

バイオリンの場合、こういう部分を表現するのに、「弓を長めに使う」という奏法があります。(ドイツのオーケストラでは、バイオリンの弓を幅広く使ってほしい時に、指揮者が「ブライト」と言ったりします)
また、Cのところでは、オリジナルのスコアを見ると、spitze(シュピッツェ)という表示があります。これはバイオリンの弓の先の部分を使って弾くという指示で、真ん中よりも張りが強い分、音の立ち上がりが早くなります。バイオリンは、曲のイメージがあまりなくても、技法指示用語で、ある程度表現できるのですが、マンドリンの場合はそういうものがないので、演奏者自身がはっきりと音のイメージを持っていなければ表現できるものではありません。

ピークの後の95小節目のアクセントは、fpのような感じ。大きな波がザワ~ンときて、引いていくような感じです。

必死にもがいて駆け上がったけれど、その先に待っているものは「死」。
やはり死から逃れることはできなかった・・・・
感情が激しく高まった後の放心状態から、また最初のメロディーが現れてきます。
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by michinokuhitori | 2009-06-13 21:51

3拍子の弾き方

「悲しきワルツ」の中に出てくる、伴奏パートの3拍子の演奏の仕方には、3つのパターンがあります。

1つめは、冒頭の部分の、限りなく溜息のモティーフ。2拍めをテヌート気味に(トレモロで)3拍目は抜きます。

2つめはEからの部分。2拍め少し弾んで、3拍目は軽く。

3つめはHからの部分。2拍めを鋭く飛ばして、音の立ち上がりをはっきりさせます。ヨーロッパの言語は鋭くて激しいアクセントの言語がたくさんありますが、そんな感じで思い切りはじけてください。

この3種類は技術的に弾き分けて練習することが必要です。まずは違いを意識しながら練習してみましょう。

2ndパートは、Hからのピチカートを、親指で弾きます。(Hに入る前の1小節間で、ピックを中指と人差し指に挟み変え、そのままの状態で親指で弾きます。)
右親指は腹を弦に当て、しっかりと圧力をかけてはじきます。
左指は、フレットの真上を押さえてください。(ブログの「ピチカート」のところを参照。おまけの奏法です。)
そして、Kに入ったⅠ拍めの休符のところで、すばやくピックを親指と人差し指に挟み変えて、Kからは普通にピックで弾きます。(厳密にいえば、Kの1小節前の3拍めを弾く動作が、挟み込みの始めの動作になるので、2拍間での挟み変えです)

・・・・口で言うのは簡単ですが、これは結構難しいですね。練習が必要だと思います。

2ndの皆さん、地味に難しいですが、めげずにがんばってください。
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by michinokuhitori | 2009-06-12 22:04

芸術の「内」と「外」

意識が、あるラインから「外に出ていく」ことと「内に入っていく」作用というのが、芸術にはあります。

この悲しきワルツの冒頭の部分は、ギターの符点2分音符だけが2小節続きます。聞いている人は、ギターの音だけが心の中心になるので、ギターの音は「内側」の音になります。

次に3小節目から、2ndとマンドラが加わります。ギターの音はそのまま鳴っていますが、音が動きません。それに対して、セカンドの音は高い音で動きます。聞いている人は高い方のセカンドの音を聞き始めるのです。そうすると、それまで「内側」だったギターの音が「外側」になり、新しく鳴り始めた2ndの音が「内側」になります。

次に、Aから1stが入ってきます。初めて長い持続音が来て、聞いている人は今度は1stの音を聞きます。そうすると、今度は1stが「内側」で2ndが「外側」となるのです。でも、ここの2ndの動きはとても重要で、それをずっと聞いていてもかまわないのです。そうなると、その人にとっては、1stが主旋律といえども、「外側」に響く素材になり、2ndが「内側」です。

そして、これは強制されるものではなく、あくまでも聞いている人が自由に出入りできるものです。

こういう内と外の問題というのが、芸術では重要で、それがないとただの音の遊びになってしまいます。特にポリフォニーは、こういう要素がとても大きいのです。

メロディーと伴奏、というように、境界線がはっきりしていると、聞き分けるのは楽ですが、「主旋律らしく」、「伴奏らしく」と色分けしてしまうと、奥行きがなくなるし、神秘性を失わせてしまうことになります。
聞いている人の意識が、自由に内側にいったり外側にいったりして、うつろう感じ。これがこの曲の最初のテーマの重要な要素なので、冒頭からBまでの部分は、全パート同質な響き、それも色彩感のないモノクロな感じで演奏したいところです。
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by michinokuhitori | 2009-06-12 21:44